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MEMORY

9/10/2012
 

大正末期に建設されて以来約90年、弊社が所在するこの地神田で時代の移り変わりと人々の人生を見守ってきた一軒の()店舗兼住宅が、老朽化と再開発により取り壊されることになりました。
お別れの一般公開があるとのことで先ほどお邪魔してきました。

この「柏山邸」(神田須田町一丁目)ファサードに銅の板が葺かれた「銅板建築」と呼ばれる大変貴重な造りで、銅板に加え、“マンサード屋根”というフランスの建築様式が評価され、「千代田区景観街づくり重要物件」にも認定されています。
先週の読売新聞でこの話題を見つけたとき私の目を惹いたのは、このお宅が3代に亘り「池田屋」という屋号で紳士服の裏地屋を営まれていたことでした。

そう、ご存じの方も多いと思いますが、神田須田町は戦前から多くの服地卸商、裏地・ボタンなどの付属商などが軒を連ねた日本随一の「注文紳士服の街」でした。

弊社は平成に入り隣の神田淡路町に移りましたが、創業から長きに亘り神田須田町2丁目に本社がありました。私が子供の頃会社を訪れると周りに大小様々な会社・店があり、全国からテーラーさんが集まり大変活気があったのを覚えています。
今では注文紳士服関連の業者はめっきり減り、当時のこの地の賑わいを窺い知ることは難しくなってしまいました。

街の記憶と日本の注文服業界の歴史が 刻み込まれた貴重な建物が失われるのは非常に残念ですが、私は3代に亘って引き継いできた服地卸業をこれからもこの神田で続けていきたいと思っています。

裏地店営業当時の様子(展示パネルより)

展示されていた当時の商品、道具など